システム原形とは?複数の切り口で根本原因を探る

システム原形とは?複数の切り口で根本原因を探る

 問題の根本を見極め、どこをどう変化させれば問題を根本的に解決でき、どうしたら少ない力で大きな変化を生み出せるかを見極める、知るのに有効なのがシステム思考(システムシンキング, System thinking)です。

システム思考では、時系列での変化を追い、どんな構造が中に隠れているのかを見つけだし、どこを変化させれると大きな変化を起こせるのかを把握するのに役立ち、変化の理論(theory of change)と呼ばれています。

8つのシステム原型の概要

 この時系列パターン、因果関係の構造でよく陥りがちなものがあり、それらをまとめたものをシステム原型(System archetypes)と呼びます。システム原型は全部で8つあり、以下の通りです。下記に、それぞれのシステム原型の概要を説明したいと思います。

  1. 応急処置の失敗(Fixes that fail) 応急処置をすることで、最初は問題の症状が和らぐものの、遅れて問題をさらに悪化させることになる構造を表したものです。
  2. 問題の転嫁(Shifting the burden) 対処療法を施すことで、それが意図しない結果をもたらし、本来すべき根本の対処への意欲が低下し、問題が悪化する構造を表したものです。
  3. 成功の限界(Limits to success) 最初は努力するほど成功するものの、その成功が要因で成長に限りがでてきて、停滞どころか、支配するループの方向性が変わり、どんどん成功から遠のいていく事態になる可能性を示唆する構造となります。
  4. 目標のなし崩し(Drifting goals) 目標と現状とのギャップが大きくなるほど、本来ならば、それに対する対策を講じて、ギャップを埋めるべきであるものの、ギャップが大きいほど、当初の目標を下降修正する圧力(プレッシャー)が働き、目標を下降修正する。そうすると、ギャップがないので、本来の対策も講じる必要がなくなり、改善がなされなくなり、時が経つとまたギャップが、大きくなり、プレッシャーに負けて目標を下降修正する。そうすると、どんどん実体の状態がわるくなる。となり得る可能性を示唆する構造です。
  5. 成長と投資不足(Growth and underinvestment) 成功の限界と目標のなし崩しを合わせたもので、成長して限界がきて、制約要因を解消するために、資源(人材、設備、時間、育成、能力)への投資に対しての認識を最初は持つのだが、成長が停滞することで、需要が減り、当初の投資の認識も薄れて、能力も落ち、なし崩し的に、衰退が起こることを示唆する構造となっています。
  6. 成功には成功を(Success to the successful) これは、成功者は一度うまくいくと、競合相手よりも資源(お金、時間、人、信頼,情報)などをもらいやすくなり、どんどん成功する方に資源が集まり、より成功者が成功する構造を表したものです。企業での競争戦略を描く上でも参考になると思います。例えば、ネットワーク効果を表現することができます。
  7. エスカレート(Escalation) これは、競合状態にあるときに一方が成功することで、それに他方が過度に反応して、それが繰り返され、どんどん両方にとって不利な状態になるような状態を表しています。例えば、価格競争などはエスカレートで表現出来ます。
  8. 共有地の悲劇(tragedy of commons) これは、資源に限りがあるものに関して起こるもので、最終的には皆が不幸になるような構想を表しています。例えば、漁業で、個人が自分たちだけの利益を追うことで、最終的には魚が取れなくなり、みんなが不幸になるような構造をとります。

以上がシステム原型のそれぞれの概要になります。では、これらをどのように使うことで、日常生活や仕事で活かせるのかはまだ疑問に残る方も多いと思います。次に、どうしたら活かせるのかを説明します。

システム原型の活かし方

一つの状況、問題に対して、色々なシステム原型というレンズを使って状況・問題を見ることで、色々な切り口で物事を見ることができるようになります。そうすると、問題に対しての理解が深まり、次に何が起きそうか?なども予測しやすくなります。このように色々な切り口で物事をみるレンジとしてシステム原型を使うことができます。

もうひとつの使い方としては戦略構築に使えます。例えば成功には成功にをのパターン(例えば、ネットワーク効果)を理想として描き、不足している部分を明らかにして、理想の仕組みへと近づけるように課題を設定するというような使い方もできます。

システム原型、システム思考を身につけたくなったでしょうか? 身につけるためには、何度も練習問題や日々の出来事を時系列パターンにし、因果ループ図を書くことで習得できます。そこで、おすすめなのが練習問題が豊富なシステムシンキングトレーニングブックです。練習問題がたくさんあり、習得する上でとても参考になります。

しかしながら、上記の本は絶版されていて、値段も高いので、システム思考の基礎がわかるシステム・シンキング 論理思考を超える問題解決のスキルシステム思考教本を代わりに読むのもいいかもしれません。これらを理解すれば、システム思考とは?という部分も明確になり、日々実践できる土台は作れると思います。参考にしてみてください。

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