【実践】SPIN営業術の具体的な実践手法とは?
大型商談を成約に導くSPIN営業術の本は読んだけど、「実践できない、実践したけどうまくいかない」そんな方にどうやったら実践できるのか?どういう点に気をつければよいのか?をSPIN営業術の各プロセスで紹介します。
どうやったらSPIN営業術を実践できるのか?
実践するためには何が必要でしょうか?それは、SPIN営業術をすることでそもそも何を実現したいのか?を知ること、すなわち、どういう理論のもとにSPINが成り立っているのかを知ることが大事だと考えています。そうすることで、SPIN営業術で実現すべき方向性を間違わずに、SPINを実践することができるようになります。
どういう理論にSPIN営業術は基づいているのか?
そもそもSPIN営業術が何を実現したいのかを理解し、かつ、SPINのプロセスに沿えば、細かいところでのブレがあっても目指している方向性は間違いません。そうすると、違う方向に向かっていくような実践の方法自体が間違っているために成果がでないということが起きなくなります。
前置きが長くなりましたが、SPINは見込み客がどういう場合に成約、購入といった行動に至るかを、態度変容、行動変容、あるいは費用便益分析という理論を基に作っています。 それでは、実際にどういった理論なのかを見ていきたいと思います
見込み客が成約に至る費用便益モデル
図のように見込み客にとっての便益(利益、効果、価値)のほうが、費用(お金、心理的な負担、かける労力、時間)よりも高ければ便益を取りに行く行動を起こします。営業で言えば成約に至る行動を見込み客が起こします。逆に便益が費用と同じか、費用のほうが高いと、行動する意味がないので、成約までには至りません。
SPIN営業術では、この理論を使って常に、見込み客にとって、解決にかける費用よりも、見込み客が認知する便益(利益、効果、価値)の方が高くなるようにするというのが、大原則になります。SPINでは、この便益を高めるために、示唆質問、解決質問が使われます。そのことからも示唆質問、解決質問がSPINでは重要であるということがわかります
この費用便益分析という理論に基づいて、質問(商談)により見込み客が認知する便益をあげていくのがSPINが本質的に行っていることです。ここを理解しておけば、方向を見失わずに実践できるようになります。
続いて、この費用便益における、便益を上げていく手法であるSPINの各プロセスで気をつけるべきことを紹介していきます。
SPIN営業術の各プロセスの具体的な実践手法
SPIN営業術は、費用便益における見込み客が認知する便益を上げていく手法になります。 そして、下記のプロセスをSPINでは辿ります
- S:状況質問(Situation question)で現状を把握し、
- P:問題質問(Problem question)で見込み客に問題を認知させ、
- I:示唆質問(Implication question)で問題の重要性に気づかせ、 解決の必要性を認識してもらい、
- P:解決質問(Need-payoff question)で解決したときの効果・便益が支払う費用(コスト)を上回ることを認識してもらう。
それでは、それぞれのプロセスの目的と、どのような点に気をつけて実行・実践すればよいのかを説明していきます。
状況質問の目的と実践手法
状況質問(Situation Question)は、現状の状態を聞く質問で、現状を把握して問題質問(問題点の把握)に繋げるのが目的の質問となります。質問は、例えば、「今00という製品を使っていますか?」や「今の顧客の数はどのくらいですか?」などです。
状況質問では調べればある程度わかることであったりするため、何回も質問すると相手もイライラしてくるので、最低限に留める必要があると考えています。
問題質問の目的と実践手法
問題質問(Problem Question)は、見込み客の問題点、不満を探り出し、見込み客に問題を語らせるのが目的の質問となります。例えば、「今使っている設備には満足してますか?今の顧客の数には満足してますか?、今の営業生産には満足していますか?」のようなものです。
問題質問では、直接的な不満、問題がありそうなことを聞くのが効果的です。特に小型商談では、問題点(SPINでは潜在ニーズと呼ぶ)の把握が重要なので、それを聞くだけで、相手も興味をもち、そして無駄な状況質問を聞かなくて済むので相手もイライラしないで済みます。
問題質問をするときのコツ・下準備
見込み客が抱える問題点を見つけるにあたり、そもそも自社で解決可能な問題でなければなりません。そのため下準備として、以下の2点を準備すべきです。
- 見込み客が抱えているかもしれなく、かつ、自社の製品で解決可能な潜在的な問題点を3つは考えて書き出す
- 上記で出した問題点が把握できるための質問を用意する
示唆質問の目的と実践手法
示唆質問(Situation question)は、最初は大した問題ではないと思っていたことをアクションを起こすべき問題だと認識させるのが目的の質問です。小型商談と比較するとわかりやすいと思いますので、小型商談の例を紹介します。
小型商談においては、問題点を認識させ、解決策を出すとそのニーズが満たされ、かつ、お金(費用)もそんなにかからないので顧客は納得して買う決定を下します。(費用便益モデルの費用が小さいので、解決策で問題を解決できることを認識してもらえれば、シーソーがすぐに傾き、成約、購買といいった行動に繋がりやすい)
しかし、大型商談ではかかるお金(費用)が大きいため問題を認識しても、当初はその問題がコストと比較した時に払う価値がない状態がほとんどです。そのため、当初は大した問題ではないと思っているものを、解決しなければならない問題だと認識させます。これが示唆質問になります。わかりやすく説明すると、図のようにシーソーに乗っている費用は小型商談よりも重いので、それを動かすには、より便益(問題点)を重くしなければならなりません。それを重くするのが示唆質問の役割なのです。
つまり、最初は問題点を認識した程度の問題を、どのくらいの損失が出ているのか、どのくらいのコストをかけても良い問題なのか?という問題の深刻さ、重要さを認識させることで、解決の必要性を上げるのが示唆質問なのです。そのためには、問題が与える影響や結果などについての質問をすることで相手に気がついてもらう必要があります。
示唆質問を実践するためのの4つの準備
示唆質問を実践するにあたり必要な準備が以下の4つになります
- 見込み客が抱えているであろう問題点を書き出す
- その問題に関連した問題、問題から派生する新たな影響がないかを書き出す
- 書き出した影響に関してのさらなる経営視点を持った問題点(人材(組織)、業務効率)がないかを書き出す
- そして、それが起きているかに関しての質問を用意する
上記、4つのステップで示唆質問ができるようになります。例えば、利用者が少ないとどんな影響出ていきますか?人員が少ないとどんな影響がでますか?などです。
解決質問の目的と実践手法
解決質問(Need-payoff question)は、解決した際の利点を相手に語らせて、製品理解も深めさせるのが目的の質問です。示唆質問では問題を解決しない場合の影響について考えさせ、その問題の深刻さ、解決の必要性を考えさせるのに対して、解決質問では、解決したときにどんな効果があるのか、すなわち、解決によってどんな便益(価値、お金)を見込めるのかを相手に考えさせ、それによって、解決にかける費用と比べたときに十分に、シーソー上でも便益(価値)が重くなるようにするのが解決質問なのです。
解決質問をするための3つの準備
- 練習代になる同僚、友人を決める
- 相手のニーズを想定する
- 解決質問して相手のニーズを満たすことによる利点を語らせる
注意することは、自社製品では解決できないことに対して、どうして〇〇ができるものが必要なんですか?と聞かないことです。 そすうると、解決できないニーズを高めてしまい自社の製品が売れなくなってしまいます。そのため、自社製品で解決できるものに対して、どうしてそれが必要だと思うか?を聞けば良いのです。
具体的な解決質問の質問
解決質問では以下のように質問すると、解決したときの利点を相手に語らせることができます。
- どうしてそれが重要なんですか
- それにどういうメリットがあるんですか
- もし〇〇ならあなたの役に立ちますか
- 他にもそのことによる利点はありますか
解決型質問で、見込み客が問題を解決したときの利点を引き出したなら、次はうちの商品にはそれができますと利益を伝えれば良いだけです。ここで気をつけなければならないのは、商品が見込み客が示した顕在ニーズ(顧客が示した具体的な欲求。例えば、営業の生産性を上げる、営業の生産を上げるため研修方法)にどう応えられるか?を示さなければなりません。もし、顕在ニーズに対して答えられなければ、見込み客としてはうちには関係のないものとなってしまいます。そのため、顕在ニーズに対してどう商品が応えられるかを示すことがもっとも重要となります。
まとめ
費用便益モデルがSPIN営業術の背景に隠れている理論であることを紹介し、SPINの各プロセスの質問の目的と実践するためのポイントを紹介しました。
SPIN営業術は、
- 相手に問題を認識させる
- さらにその問題点の重要性を認識させる
- その問題点を解決したときの効果を認識させる
- 最後に、問題の解決を自社の商品で解決できることを示す
というのがSPINで行っている一連のプロセスでした。
SPIN営業術の実践にはこの記事を読んだだけでも実践できると思いますが、大型商談を成約に導くSPIN営業術を読むとより理解が深まるので、おすすめてしています。